先進国の日本においても、子どもの貧困の克服が切実な課題となってきている。子どもの相対的貧困率は上昇傾向にあり、16.3%に達し過去最高となっている(2012年。厚生労働省による)。とりわけ、母子家庭の平均所得は213万円と一般家庭の37.8%の水準にとどまっており(06年度全国母子世帯等調査)、約60%が貧困家庭とも言われる。子どもの貧困は、経済のグローバル化にともなう労働市場の構造変化と低成長、さらには、金融不況によってクローズアップされてきた。あるいは、非正規雇用など不安定雇用の増加によって増幅された格差拡大の象徴的現象でもある。しかも、家庭の経済条件は文化的環境とも相乗し合って、子どもの学力保障を弱体化させていく。民主党を中心とした当時の政権は、10年度に制度化された子ども手当(12年度に「児童手当」へ名称変更)支給と高校教育の無償化によってこれらの状況を克服しようとした。しかし、再び自民党政権下となり、高校無償化法は高校就学支援金支給法に変更され、年収910万円以上の世帯では無償化の適用外とされるに至った(14年4月実施)。財源の問題はあるが、子どもの貧困を撲滅し、必要なところに必要な社会的・経済的資源が振り向けられるかどうかが問われている。