鉄道、バス、タクシー、航空などの交通政策を包括的、総合的に律する法律。13年11月に国会で可決された。これによって、交通体系全体の最適化を進め、財政の効率化を実現し、環境負荷を軽減することなどを目指す。また、近年の競争促進政策によって衰退してきた地方の生活交通を維持・再生させようという目的もある。従来、交通行政では、鉄道事業法、道路運送法、航空法など、個別に事業法が設定されている。こうした体制のもとでは、交通機関間の有機的な連携が果たせず、重複投資などの無駄、非効率さなどの存在が批判されてきた。一方、欧米では、総合的な交通基本法がすでに制定されているところが多い。その中でも特に注目されているのがフランスの国内交通基本法(LOTI)である。この中では基本法の中心となる概念として「交通権」が規定され、交通を利用することは国民の権利であると位置づけられた。そして、それに対する国の責務などが明文化されている。日本でも交通権に関する議論は展開されてきたが、今回の法律には盛り込まれなかった。