地域の不動産市況やニーズに見合った、その地域にふさわしい規模の再開発のこと。これまでの再開発事業は、右肩上がりの経済成長時代の影響が強く、できるだけ巨大な、高容積の建物を造ることで、多くの保留床(土地の高度利用により生み出された建物の床のうち、地権者等が取得する床以外の余剰床の部分)を確保し、その保留床の売却益で開発費を調達しようというものであった。しかし、人口減少や不動産市況の変化を背景に、過大な規模の再開発ビルの保留床の売却が見込めず事業として成立しない、あるいは再開発ビルからのキーテナント撤退による空き店舗化など、様々な問題が懸念されるようになった。そこで、必ずしも高容積にとらわれず、地域の床需要や周辺の市街地に配慮しながら、その地域の実情に即した「身の丈に見合う」再開発事業が取り組まれるようになった。
例えば、石川県金沢市の中心商業地の武蔵ヶ辻に位置する近江町市場の再開発事業(09年完了)では、当初、オフィスやホテルなど、従来型の高層ビルが計画されていたが、民間資本の参加が見込めず、身の丈に合った低容積の、魚河岸を中心とする再開発事業に変更し、市場の雰囲気や歴史的な建築物を保存活用しながら、老朽化した小規模店舗街区の更新や交通広場の整備等が行われた。