都市及びその近郊における農業のこと、またそのための農地。具体的にどこで行われている農業を指すのかについて法律上の明確な定義や統一的な見解はなく、大別すると、最も狭義なものが(1)市街化区域内で行われている農業で、より広く捉えた(2)(1)及び市街化調整区域で行われている農業や、(3)農林水産統計における農業地域類型区分の都市的地域で行われている農業、のいずれかの意味で使用される場合が多い。都市農業が全国の農業に占める割合は小さくなく、(3)の都市的地域における農業産出額は全国の3割を占め、特に、付加価値が高く技術集約による生産性の向上が期待できる花き、野菜、果実などのシェアが高い。一方で、市街化区域は、「おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」とされているため、市街化区域内の農地は、農業施策の対象から除外されている。さらに、バブル期には地価高騰を受けて、3大都市圏の市街化区域内農地は「宅地化する農地」と「保全すべき農地」とに峻別(しゅんべつ)された。前者は、利用転換を促進する手段として宅地並みの課税が実施され、後者は都市計画の地域地区の一つである生産緑地地区に指定され、保全が図られている。都市の農地は、食料供給だけでなく、ヒートアイランド現象の緩和機能や、市民農園などのレクリエーション機能、防災機能などを有しており、さらに人口減少、緑地面積の減少等を受け、都市内の貴重な緑地としての都市農地の保全を求める動きが活発になりつつある。