2014年4月に国内のLCC(低コスト航空会社)であるピーチ・アビエーションが、パイロットを確保できないという理由によって大量の欠航を長期的に余儀なくされると発表したことから、航空業界におけるパイロット不足の問題がにわかに脚光を浴びるようになった。これは、主に2000年代に入ってから世界的にLCCが急成長を遂げ、パイロットの需要が急速に高まったことによる。その一方、パイロットを養成するには長い訓練期間と膨大なコストが必要となり、簡単に増やすわけにはいかない。日本の場合、パイロットの供給源としては主に、航空大学校の卒業生、自衛隊パイロットからの転向、外国人パイロットの採用、そして航空会社による養成などがある。近年、日本の大学は航空会社と提携してパイロットの養成コースを立ち上げてきたが、十分な人材を供給しているとは言い難い。今後、日本国内では、2030年頃になると既存のパイロットの多くが定年退職を迎えるため、年間400人規模で新規操縦士の採用を行っていく必要があるという観測もある。これを「2030年問題」という。当面はパイロットの年齢上限の緩和、乗務制限時間の延長、外国人パイロットの登用、などで対応するしかないが、いずれも一時しのぎの対策であり、パイロットの安定的供給体制を根本的に再構築していく必要がある。