京都市で1956年から制定されている条例。屋外広告物である看板・広告の掲出方法は、わが国では、「良好な景観の形成又は風致の維持」「公衆に対する危害の防止」の目的で屋外広告物法によってその基本的な取り扱い方が規定されており、具体的には都道府県、政令市および中核市が屋外広告物条例を定め、必要な規制を行っている。屋外広告物の最も基本的な自家用広告物(看板)の掲出面積について見ると、東京都や兵庫県では地区によって合計5平方メートル以下または10平方メートル以下、大阪府では7平方メートル以下、京都市では2平方メートル以下と規定されている。日本の基準は欧米に比して緩い傾向にあるが、京都市では、アメリカのハワイ州(2.16平方メートル)やドイツのハレ(1.5平方メートル)などと同等の厳しい基準になっている。京都市はさらに新景観政策の一環として、2007年3月に規制の強化を図り、屋外広告物条例の改正等を行った。これには「世界遺産等周辺における屋外広告物規制の強化」「屋上屋外広告物の全面禁止」「優良な屋外広告物の設置誘導」「違反屋外広告物への対応の強化」などが盛り込まれている。このなかで最も厳しくユニークなのが、新条例によって既存不適格になった広告物の取り扱いで、14年8月までに原則として撤去もしくは改修しなければならないとしたことである。京都市は担当職員の増員など体制の強化を行って取り組み、繁華街を中心に大きな成果をあげた。市民ぐるみの取り組みも積極的に行われており、市は条例違反のはり札や立て看板等の除却活動を行う市民サポーターを「京(みやこ)・輝き隊」として認定している(08年12月現在、36団体549人)。しかし、問題点として、違反看板の撤去費用の自己負担への反発や新屋外広告物対策の周知徹底の不十分なことなどが指摘されている。実際に、14年7月時点で、市内にある約4万5000件の屋外広告物のうち、違反は2割に上るといわれる。違反広告物の掲出者が市からの除却命令に応じない場合は、市は違反者の公表を行うことができる。この処分を受けた者から地方裁判所へ処分取り消しの訴えが提起され、あわせて執行停止の申し立てが行われている例もある。京都市は全国的な企業(一例としてマクドナルド)のコーポレートカラーであっても京都にふさわしいものに変えるよう指導してきた。旧条例以来のことで、改正後も新条例の柱の一つとして引き継がれており、その事例が収録された「京のサイン」(サイン=屋外広告物)が発行されている。