字義は変換、転換。古い建物の改修・修復を意味する英語はリフォーム、リノベーションであるが、コンバージョンはその上で利用の転換をする(住宅を店舗として利用するなど)ことを意味する。建物を長く使い続けるヨーロッパなどでは普通に行われている。コンバージョンがまちの再生につながった例としてニューヨーク市のSoHo(South of Houston Industrial Area)地区がある。この古い工場地区に対し、ニューヨーク市はハイウェーの導入を契機にして再開発する計画を立てた。しかし、地区の古い建物の歴史的・文化的な価値を保存するべきと考える人びとはこれに反対し、1969年に市は計画を撤回した。反対運動のリーダーは有名な活動家のジェーン・ジェイコブスであった。60年代の初めには、大掛かりなアート作品の制作がはやっており、貨物エレベーターが使え、賃貸料が手頃なSoHo地区のロフトはその制作場所にぴったりだった。地区にはそうしたパイオニア的な芸術家たちが集まり、まず空のロフトを不法に占拠し、魅力的で機能的な生活や制作の空間に変えていった。SoHo地区は現代芸術の場となり、画廊や出版社、コンピューター・コンサルタントなどを呼び寄せ、さらに観光客が集まる地区になった。こうしてコンバージョンによって、取り壊しの運命にあった地区が時代の先端を行く地区に変容した。同じような変化は、デンバーのLoDo、シアトルのSoDo、サンフランシスコのSoMaなどアメリカ全土で起こり、SoHo現象と呼ばれる。またロフトのコンバージョンが引き金になったことからロフト現象ともいわれる。日本でも古い建物のコンバージョンがまちの再生に貢献する例が増加している。大阪では、第二次世界大戦時の空襲を免れた、空堀、中崎町、野田などで古い住宅(長屋など)の店舗等へのコンバージョンが行われ、若者が集まるまちに変容した。コンバージョンはもはや流行の様相を呈しているが、持続可能な社会づくりにおいては、建物ストック全般のコンバージョン的な活用が展開することに期待がかかっている。先行的な事例として、廃校となった小学校を改修した「京都芸術センター」や、昭和30年代に建てられた古いビルをまちづくり活動の拠点とした福岡の「リノベーションミュージアム冷泉荘」などがある。