河川敷地にせり出すような形で床やテラスを設け、その上部を、飲食業の店舗やイベントスペースなどとして活用する空間利用のひとつの形態。ただし、通常、「川床」というと京都市の鴨川沿いに夏季限定で設けられる伝統的しつらえなどを指すので、新しい形態のものはテラスと呼ばれることが多い。河川法の規定により、河川敷地およびその上部の利用は、従来公共性・公益性の高いものに限定されてきた。そのため、都市の大規模な河川の周辺では、水辺という空間資源が十分に活用されない状況にあった。一方、河川法の適用対象外である小規模な水路では法河川のように厳密な制約がないことも多く、比較的その上部空間が自由に利用されてきた。京都の鴨川納涼床は1952年に制定された「納涼床許可標準」に従って設置されてきた。河川法の規制にもかかわらず実施されてきたのは、「昔から続く伝統的な行いであること」「地元の人びとが地元のために組織化して取り組んでいること」「自らルールを定めそれに従って行っていること」「それが公共的な利益にかなうものであると行政が認めたこと」という条件の下であった。2007年、京都府鴨川条例が公布され、その下であらたな「鴨川納涼床に関する審査基準」が制定された。また、08年、河川法準則の特例措置を受けて、大阪市内を流れる土佐堀川左岸に「北浜テラス」という名称で川床が実験的に設置された。11年に河川法による規制が緩和され、治水上の問題がない場合には河川敷地を民間事業者が利用することができるようになった。ただし、これにあたっては河川管理者との協議、地元の合意が必要であり、地域の活性化やにぎわいづくりに寄与することがひとつの前提となっている。このことは、オープンカフェなどを目的とする、道路占用に関する規制緩和とも関係しており、海外の諸都市で見られるように、河川や道路などの公共空間におけるにぎわいと魅力ある空間の創出がひとつの時代の趨勢(すうせい)となっている。