郊外に拠点をもつ大学がそのキャンパスを都心に移動させること、あるいは副キャンパスを都心に新たに設けること。近年、その傾向が顕著となっている。1970年代以降、高度経済成長期の都心の地価の高騰や、工業(場)等制限法、都市計画法などの法律の制限などにより、都心部における大学の新設や増設が困難となり、そのために都心にあった大学が郊外に移転したり、副キャンパスを郊外に新設する動きが顕著にであった。特に、同時代の郊外ニュータウン開発に歩調を合わせて、ニュータウンやその近辺に大学を設けることが数多くみられた。 しかし、2000年代に入って、人口減少や少子高齢化による大学間競争の激化、規制の緩和、都心の遊休地の増加等により、大学が再び都心にキャンパスを戻す事例が増えている。大学が都心に回帰することにより、都市の活性化や地域のイメージ形成に対する期待がもたれている。たとえば、多くの大学で街中の空き家や空き店舗などを活用した、フィールドステーションが設置される事例が増えており、そこを拠点にゼミやまちづくり活動を実施し、地域住民や行政、事業者との協働による、地域活性化に取り組んでいる。また国も「地(知)の拠点整備事業」(大学COC事業)等を通して、地域コミュニティーの核としての大学の機能を強化する姿勢を見せており、かつての閉ざされた空間ではなく、都市の拠点としての新しい役割が大学に期待されている。