地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化・伝統を語るストーリーを「日本遺産」として文化庁が認定する事業。市町村、市町村の連名または都道府県が申請し、日本遺産審査委員会の審査を経て認定される。文化財版のクールジャパン戦略といえる。文化財指定や世界遺産登録は、対象の保護を目的とするのに対し、日本遺産は、それらを活用し地域活性化を図ることを目的としている。認定するストーリーは、歴史的経緯や地域の風土に根ざし、世代を超えて受け継がれている伝承、風習などを踏まえていること、その中核に建造物や遺跡・名勝地、祭りなど、文化財に関連するものが位置づけられていること、単に地域の歴史や文化財の価値を解説するだけのものになっていないことが求められる。ストーリーには、単一の市町村内で完結する「地域型」と、複数の市町村にまたがって展開する「シリアル型(ネットワーク型)」の2種類が想定されている。ストーリーを語る上で不可欠な文化財群には、有形・無形のあらゆる文化財を対象とすることができるが、国指定・選定文化財を必ず一つは含める必要がある。東京で開催予定のオリンピック・パラリンピックに向け、文化庁は、日本遺産を2020年までに100件程度認定していく予定としている。15年度、16年度に認定されたストーリーは37件あり、例示すると、「四国遍路~回遊型巡礼路と独自の巡礼文化~」「灯(あか)り舞う半島 能登~熱狂のキリコ祭り~」「かかあ天下-ぐんまの絹物語-」などがある。類似の政策として、経済産業省が取り組む「地域ストーリー作り」がある。