2011年9月3~4日に起きた、台風12号の記録的大雨による災害。台風第12号は日本の南海上をゆっくりと北上し(時速約10キロ)、強い勢力(中心気圧965ヘクトパスカル)を保ったまま、9月3日午前10時前に高知県東部に上陸した。台風の進行速度が遅く、海面水温も高かったために、奈良県上北山村で総降水量1808.5ミリ、72時間雨量1652.5ミリという日本記録となる大雨となった。このため、紀伊半島の中心部で洪水はん濫災害と土砂災害が多発し、死者・行方不明者は97人に達した。1889年(明治22)十津川大水害の再来ともいわれ、改めて大規模土砂災害の破壊力の大きさを見せつけた災害であった。特に、土砂崩れによって発生したせき止め湖(土砂ダム)が奈良、和歌山両県で17カ所確認された。 規模が大きく決壊の可能性があると警戒されるせき止め湖は、5カ所で、そのうち最大は奈良県十津川村栗平の、満水時の容量750万立方メートル、せき止めている土砂の高さ100メートルのものであった。その後、9月8日には台風14号による大雨により、さらに16日からは台風15号によって大気が不安定となり、土砂ダムの周辺の2市2村は計8地区を災害対策基本法に基づく警戒区域に設定した。