消化性潰瘍の治療は、現在、攻撃因子阻害薬であるヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー ; シメチジン、ファモチジン、ラニチジンなど)、あるいはプロトンポンプ阻害薬(PPI ; オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール)が主に使われ、粘膜保護因子薬、制酸薬、抗コリン薬が併用される。しかし、PPIでも難治例や再発例といった問題がある。ウォーレンとマーシャルが、1982年に胃炎とらせん状菌との関連性を示唆し、この菌をヘリコバクター・ピロリと89年に命名した。日本人でのヘリコバクター・ピロリ検出率は、十二指腸潰瘍で90%前後、胃潰瘍で80%前後といわれている。その作用機序として、ヘリコバクター・ピロリ自身がウレアーゼという酵素を出し、胃内の尿素(無害)をアンモニア(アルカリ性)に分解し、発生したアンモニアが胃粘液層を脆弱化し、胃粘膜障害を引き起こすと考えられている。ヘリコバクター・ピロリが関与する疾患として、萎縮性胃炎、消化性潰瘍などがあり、また胃がんリスクが10倍高くなる。PPIのランソプラゾール、オメプラゾールがペニシリン系抗生物質のアモキシシリンおよびマクロライド系抗生物質のクラリスロマイシンとの3剤併用によるヘリコバクター・ピロリ除菌療法として日本で承認された。