母乳は乳児にとって最良の栄養源であり、免疫学的にも優れている。しかし、母親が必ずしも健康であるとは限らず、薬物を服用しなければならない場合もある。一般的には、脂溶性の高い薬物、弱塩基性薬物、たんぱく結合率の低い薬物、分子量の小さい薬物が母乳中へ移行しやすいとされている。また、母親が肝障害、腎障害等を有している場合には母親に薬物が蓄積しやすくなり、母乳中にも高濃度で移行してしまう。また、乳児が未熟児や新生児の場合、母乳中の薬物を摂取すると各機能の発達が不十分なため、薬物の蓄積が起こりやすくなる。一般的に、抗悪性腫瘍薬や放射性医薬品は、少量であっても乳児に摂取させない方がよい薬物であり、一時授乳を中止する必要もある。母親が摂取した薬物により、乳児に影響がみられた報告もあるが、医療機関を受診した際には、授乳中であることを相談することが必要となる。