医薬品の副作用、相互作用(薬物動態学的)の発現は、その吸収(A)、分布(D)、代謝(M)、排泄(E)に大きく依存しており、中でも代謝部位で起きる薬物-薬物間の相互作用は頻度も高く重要なものが多い。薬物の代謝は種々の酵素によって行われるが、薬物相互作用を引き起こす酵素はチトクロームP450(CYP)という薬物代謝酵素を介するものが圧倒的に多い。患者ごとの適切な薬物治療(Personalized Medicine)を計画する上でもCYPに関する基礎的な知識は必須で、それらは基質特異性を異にする種々のアイソザイム(分子種)が存在する。特に、CYP1A2、2C9、2C19、2D6、3A4などでの薬物代謝が問題となる。医薬品は(1)その医薬品が代謝されるアイソザイム、(2)その医薬品が阻害するアイソザイム、(3)その医薬品が誘導するアイソザイムにより分類され、薬物間相互作用はこれら(1)~(3)の組み合わせにより引き起こされる。CYPは脂溶性薬物の水溶性(極性)を高め排泄を促す代謝酵素で、主に肝臓や消化管に存在する。また、薬物相互作用を分類するとCYPの阻害によるものが全体の70%と最も多く、ついで誘導によるものが23%、その他が7%となっている。