ボツリヌス菌がもつ、A型ボツリヌス毒素を含有する注射剤。末梢神経筋の接合部での神経伝達を阻害し、骨格筋を弛緩させる作用がある。医療分野では(1)眼瞼(がんけん)けいれん、(2)片側顔面けいれん、(3)痙性斜頸(けいせいしゃけい)の治療に用いられる。ただし(2)および(3)では、特に安全性に注意を要す。本来が毒素なので、投与法、投与量、投与間隔は厳密に守ることが重要。1部位あたり初回は1.25~2.5単位を筋注投与する。再投与は初回の2倍量まで。副作用は呼吸困難、筋無力症。また、投与後に抗体が産生されて、耐性が生じる可能性もある。使用前にはインフォームド・コンセントを行い、文章で同意を得た上で治療を開始する。男性の場合は、投与中および投与後、最低3カ月間は避妊するように。美容外科分野では、ボトックスの筋弛緩(しかん)作用を利用して、しわを軽減する効果をうたっている。しかし、上記の副作用にはくれぐれも注意を要する。