中枢性の経口鎮痛剤。脳内にあるオピオイドμ受容体に直接作用する以外に、モノアミン受容体にも間接的に作用する。μ受容体に対する親和性は鎮咳剤コデインの10分の1、麻薬系鎮痛剤モルヒネの6000分の1であるため、モルヒネなどの使用時に問題となる身体的・精神的な依存性は少ない。耐性や耽溺性(たんできせい)も低いことから、がん性疼痛の緩和ケア、術後痛など軽~中程度の疼痛の緩和に使用される。注射剤(商品名「トラマール」)として1回100~150ミリグラムを筋注する。効かない場合には4~5時間ごとに反復使用する。モルヒネなど麻薬系鎮痛剤に特有の呼吸抑制作用や便秘、嘔吐(おうと)などの副作用が少ないので、消化器がん患者への治療に適している。肝障害、モルヒネの反復投与、けいれん、胆道疾患のある患者には慎重投与となっている。副作用としては、強い吐き気、めまい、眠気、倦怠感などがある。不整脈など循環器系の副作用が出る場合もあるので、高血圧症や心臓病患者では注意が必要である。重篤な呼吸抑制、頭部傷害や脳の病変などで意識混濁の恐れがある場合や、過敏症等の症状がある患者には原則禁止となっている。