子宮頸がん予防のためのヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン。MSD(本社・東京都千代田区)の商品名。子宮頸がんの原因は、ほぼ100%がHPVの感染であることが知られている。HPVには遺伝子配列により100種類以上の遺伝子型が分類され、がん組織に高率に検出される高リスク群と、検出率の低い低リスク群に分類される。HPV感染による自然免疫は成立し難いため、感染予防にはワクチンによる強制的な免疫応答を惹起させる必要がある。すなわち、ウイルス抗原をB細胞に感作させて、記憶B細胞として骨盤リンパ節に定着させるには3回のワクチン接種が必要とされる。本ワクチンは、2種の高リスク群と2種の低リスク群に対する4価ワクチンであり、HPVの外殻たんぱく質であるL1遺伝子を酵母や昆虫細胞に発現させた、人工的ウイルス様粒子を用いた遺伝子組み換え型ワクチンである。臨床試験では、IgG抗体価が免疫64カ月後で自然感染の10~100倍に維持されていたことから、推定で少なくとも20年間は有効と考えられる。接種対象は10歳以上の女性で、接種方法は、初回、初回から1カ月後、初回から6カ月後の計3回、上腕に筋肉内接種。2011年7月に承認された。13年6月、子宮頸がんワクチン接種後に持続的な疼痛を訴える事例が相次ぎ、厚生労働省は因果関係調査のため、積極的な接種の推奨を一時中止する決定を下した。