DDS(drug delivery system)タイプの抗悪性腫瘍薬で、一般名はドキソルビシン。既存の製剤にくらべ、主成分であるドキソルビシンを腫瘍組織内に長く滞留させ、濃度を高めることにより有効性を高め、一方で血漿中の濃度は抑えて骨髄抑制、脱毛、心毒性などの有害反応を低減させる作用機序をもつ。また、肝臓や脾臓などの細網内皮系に捕捉されにくいため、血中循環時間が長く、既存の製剤に比して約255倍のAUC(薬物の効果の強弱を表す目安の一つ)を有する。さらに、細胞分裂が活発な腫瘍組織の血管については、血管透過性が高く、腫瘍組織内のドキソルビシン濃度を選択的に高める。2007年に再発卵巣がんに対する承認、09年には、化学療法後に増悪した卵巣がんに対する効能が追加承認された。