イチイ科に属する植物の樹脂から抽出された抗がん剤で、商品名は「タキソール」。がん細胞の中にある微小管のたんぱく重合を促進することで過剰形成を引き起こし、細胞分裂を阻害して抗腫瘍効果を示す。1997年10月、卵巣がんに対し有効であることが確認された。その後、99年に非小細胞肺がんと乳がん、2001年に胃がん、05年に子宮体がんへの適応が認められ、07年には乳がん治療について用法・用量の追加が承認された。乳がん、胃がん、非小細胞肺がんなどの幅広い固形がんに対して使用されるとともに、他の抗がん剤との併用により、さらに高い奏効率も認められている。副作用として、白血球減少症、脱毛、末梢神経障害(しびれ)がある。また本剤は水に溶けにくいため、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と無水エタノールの混液に溶かして体内へ投与されていたが、これらの溶媒による過敏症が報告されている。その予防策として、以前はステロイドや抗ヒスタミン薬などを、前処置で投与していた。しかし近年、パクリタキセルをヒト血清アルブミンという物質と結合させることで、水(生理食塩水)でも溶けるように工夫が施された。本剤は09年に商品名「アブラキサン」として承認され、安全で有効性が高いパクリタキセル製剤として販売されている。