躁うつ病についての精神科医向けの治療指針。精神科の学会では標準的な治療指針が作成されたことがなかったため、2011年に日本うつ病学会が初めて作成した。精神医療においては、医師によって治療法が異なる傾向があり、中には論拠のない治療や多剤併用療法の問題が指摘されてきた。指針は「医師の治療裁量権をしばるものではない」としたうえで、症状ごとに奨励される治療薬の優先順位のほか、家族との対話や規則正しい生活の指導といった精神療法も紹介している。具体的な治療法では、症状が躁病エピソード(躁状態)を満たしていて、軽度の場合は代表的な躁うつ病薬であるリチウムの処方を、重度の場合はリチウムと非定型抗精神病薬(第2世代抗精神病薬)の併用を最も推奨している。大うつ病エピソード(うつ状態)においては、治療薬クエチアピンまたはリチウムの処方を最も推奨し、維持療法ではリチウムが推奨されている。