人はポジティブな情報よりも、ネガティブな情報に注意を向けやすく、記憶にも残りやすい性質を持つ、ということを表す心理学用語。たとえば個人の過去の記憶でも、幸福な思い出よりは、辛い経験のほうが鮮明に記憶される傾向がある。有名人が善行を長年行っても、それほど世間の関心を集めないが、スキャンダルや失言には世間の関心が集まる。そういったことから、メディアの流すニュースは、悪いニュースのほうがよいニュースよりも圧倒的に多い。ネガティビティバイアスは、リスク回避のために、生物が進化の過程で身につけたものではないか、といわれている。生物が生き抜くためには、目の前のリスクやトラブルに注意を向けることが重要だからである。アメリカの心理学者ダニエル・カーネマンらは、ネガティブな変化に敏感な人の性質が、様々な経済行動に影響を与えていることを明らかにし、2002年のノーベル経済学賞を受賞した。