イギリスの精神科医ヘザー・アシュトン(C.Heather Ashton)が著した、ベンゾジアゼピンの作用、副作用、離脱症状、減薬法などをまとめたマニュアル。ベンゾジアゼピンは、抗不安薬や睡眠薬に使われる薬物で、薬物依存が問題化している。本書は公的なガイドラインではないが、ベンゾジアゼピンの依存や減薬に長年、関わってきた研究者個人が作成したマニュアルである。すでに10カ国語に翻訳され、ウェブサイトで公開されている。英語版は早くから公表されていたが、日本語版は2012年に公開された。形式は患者向けだが、内容はかなり専門的である。アシュトンマニュアルの基本的な方針は、学会が提唱しているベンゾジアゼピンの使用方法と、それほど大きく異なるものではない。例えば、長期で使用することはなるべく避ける、減薬をする際は短時間作用型から長時間作用型に置換し、その後徐々に減量する、といった具合である。そういった内容を、文献を引用しつつ、詳細に説明している点が特徴である。