食道がんは食道狭窄部に発生しやすく、なかでも胸部食道がんが80%を占める。ついで頸部食道、腹部食道原発になる。筋層が薄く直接に縦隔結合組織に埋没しているため、周辺組織への浸潤が起きやすい。白斑や異形成は前がん病変といえる。正常扁平上皮はグリコーゲンが多いのでルゴール液では褐色に染まるが、がんにはグリコーゲンが少なく不染帯を作るため、内視鏡で浸潤程度を推定できる。たばこ、強い酒、緑黄色野菜の不足した偏った食生活、熱いものの多食などが原因とされる。食道がんは治療成績が悪く、また多発性の場合が多いため一次予防が大事である。検診で発見されるような早期がんは、内視鏡手術で治癒できるようになった。2~3期の食道がんを対象に始まった国内の臨床試験の中間報告では、放射線と抗がん剤併用治療の効果は、がんが完全に消失した比率68%、3年後の生存率45%と、短期成績では手術にほぼ匹敵する結果がでた。