胃がんは大部分が幽門前庭(胃の出口付近)、あるいは体部小弯側に発生するが、まれに噴門部(入り口付近)からも発生する。後者は喫煙との関係が深い。胃がんは腸上皮化生という胃粘膜上皮の不完全再生から発生し、年齢とともに罹患率が高くなる分化型腺がんと、若年の女性にも多い低分化印鑑細胞がん、あるいはスキルスがんとに大別される。日本での罹患数は毎年10万人程度であり、死亡率は減っているが高齢者層ではまだ増加している。地域差が大きく秋田、山形、新潟など東北日本海側に多く、西日本、沖縄は少ない。高塩食品の摂取、ヘリコバクター・ピロリの感染は、前がん病変である慢性萎縮性胃炎や腸上皮化生の原因として考えられる。ピロリ菌のCagAというたんぱく質は、胃粘膜細胞の細胞結合に働くたんぱく質の機能を失わせ、細胞増殖に働くたんぱく質に付くとがん化に進む。胃の内側にがんがとどまる2センチまでの早期胃がんは、口から内視鏡を入れて高周波電流で焼き切る内視鏡的粘膜切除術が行われる。国立がんセンター中央病院では、1995年から胃に穴が開かないように工夫したITナイフ(電気メス)で、より広範囲に切り取る切開剥離法を開発し、約1000人を治療している。