甲状腺にできるがんで、一般に発生頻度は10万人に7人程度といわれている。1986年4月に起きたチェルノブイリ原子力発電所の事故後、数年を経て小児甲状腺がんの発生増加が報告された。そのため、2011年3月に起きた東京電力福島第一原子力発電所事故では、放射線被曝(ひばく)により甲状腺がんの発生リスクが高まるのではないか、と注目を集めている。現ウクライナ共和国の首都キエフの北約100キロにあるチェルノブイリは、もともとヨウ素摂取量の少ない地域で、原子力発電所事故による放射性物質に汚染された野菜や動物を摂取したり、二次汚染された魚介類や動物の摂取による内部被曝の影響が大きかったとされている。福島県の場合、総放射線放出量、食物や水分からの摂取放射線量、および日本人のヨウ素摂取状況から、チェルノブイリほどの小児甲状腺がんの多発はないものと考えられている。しかし、長期にわたる低線量被曝による影響はわかっておらず、今後の県民健康管理調査は継続していく必要がある。