体内の過剰な鉄分を、薬剤により尿や糞便に排せつ促進する治療法。サラセミア(地中海貧血)、鎌状赤血球貧血、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血では、支持療法として定期的に赤血球輸血を要する場合がある。しかし人体には過剰な鉄を排せつする機能がないため、輸血で鉄過剰症になった場合、肝臓、心臓、膵臓、皮膚などに過剰に沈着すると、肝不全や心不全、糖尿病などの合併症で死亡する場合もある。したがって、的確な判断での鉄キレート剤療法が、唯一有効な治療法となる。ガイドラインでは赤血球輸血20単位以上、血清フェリチン値1ミリリットルあたり500ナノグラム以上が鉄過剰症で、総赤血球輸血量40単位以上、血清フェリチン値が持続的に1ミリリットルあたり1000ナノグラムを超えた場合に、鉄キレート剤療法の開始を推奨している。鉄キレート剤は、デフェロキサミンという注射薬があるが、半減期が短く連日の注射が必要で、患者に大きな負担を強いていた。最近では半減期が長い経口剤のデフェラシロクス(商品名「エクジェイド」)が発売され、1日1回の経口投与ですみ、生命の質(QOL)向上に寄与している。