身体の傾きや動きについての感覚で、その感覚器は頭部の内耳である。平衡感覚には2種類あり、回転の加速度は内耳の半規管(はんきかん)で、直線の加速度は内耳の前庭器(ぜんていき)によって感知される。半規管は液を含む3本のループが、互いに直角になるよう配置され、回転運動が加わるとループの中に液の流れが生じ、ループのつけ根にある感覚有毛細胞(かんかくゆうもうさいぼう)が刺激される。前庭器には球形嚢(きゅうけいのう)と卵形嚢(らんけいのう)という2つの袋があり、重力や直線的な加速度が加わるとその壁に位置する耳石器(じせきき)の有毛感覚細胞が刺激される。平衡感覚と視覚には緊密な関係がある。文字を見るなどして視線が定まっているときに、頭が急に動くと、その動きと逆方向に眼球が反射的に運動して視線をずらさない。これを前庭動眼反射(ぜんていどうがんはんしゃ)といい、身体を動かしても視野がぶれないようにする働きをしている。バスなどに乗って激しい振動によって乗り物酔いが起こるのは、平衡感覚の情報と視覚の情報の不調和により、自律神経が反応を起こしたものである。