自然界には宇宙から到達する放射線や、鉱石などに含まれる放射性元素による放射線が存在し、人体は常に低量の自然放射線にさらされている。さらに医学検査や治療などで、人工放射線を受ける機会もある。放射線被曝には、外部から放射線を受ける放射線照射(外部被曝)と、放射性物質を体内に取り込む放射能汚染(内部被曝)がある。人体が大量の放射線を受けると、染色体が障害されて細胞増殖が不可能になる。そのため、高レベルの外部被曝では腸の上皮や骨髄の造血組織が障害されるなど、致命的な急性放射線症候群を起こす。胎児の場合には、低レベルの被曝であっても奇形や発育障害を引き起こしやすいので、妊娠中の女性は腹部のX線検査を避けなければならない。がんの発生頻度も明らかに増えるが、放射線量との関係は明確ではない。内部被曝の場合は、放射性物質の種類によって体内で蓄積する部位が異なり、微量であっても継続的に放射線を受ける場合があるので注意が必要である。