痛みとかゆみは、似ている部分と異なる部分がある。どちらも特別の感覚器がなく、神経線維の末端部が刺激されて感じることが共通している。痛みには鈍い痛みと鋭い痛みがある。鈍い痛みとかゆみはどちらも最も細い無髄の神経線維によって伝えられ、感覚の位置が漠然として特定しにくい。かゆみは皮膚と粘膜の表層だけで感じるが、痛みは身体の表面でも深部でも感じる点が異なっている。身体の表面では鋭い痛みと鈍い痛みの両方を感じるが、身体の深部では鈍い痛みだけを感じる。深部の痛みのうちで腹部の内臓から起こるものは、平滑筋が強力に収縮して生じることが多い。平滑筋の収縮により局所の貧血と細胞外液の酸性化が起こり、痛覚神経線維が刺激されると考えられている。腹痛のときに服用する臭化ブチルスコポラミンは、神経の興奮を抑えるのではなく、平滑筋の収縮を抑える薬なので、皮膚や筋肉の痛みには効き目がない。