食物の咀嚼(そしゃく)は、上顎の歯に対し下顎の歯を押し付けたりずり動かして行われる。顎関節に大きな自由度があるので、下顎骨は単に上下に開閉するだけでなく、前後にも左右にもずれることができる。下顎骨を動かすのは咬筋、側頭筋、内側・外側翼突筋などの咀嚼筋で、ほとんどが三叉神経に支配されている。咀嚼は随意運動と考えられるが、実際には不随意的な反射運動の要素が多い。咀嚼は哺乳類に特異的な現象である。唇と頬は哺乳類になって発達した構造であるが、口腔を閉ざすことにより、食物のかみ砕きを容易にしている。また切歯、犬歯、臼歯と歯が分化しているのも哺乳類の特徴である。実際に、下等脊椎動物では食物をかみ砕かずに嚥下(えんげ)することが多い。