咽頭は、口腔から食道に抜ける食物路と、鼻腔から喉頭に抜ける呼吸路の交差点である。食物が咽頭に入ると、咽頭と鼻腔、喉頭の間がふさがって、両路の混乱を防いでいる。人間の場合には、他の哺乳類と異なり、両路が構造的に分離されているわけではないので、誤嚥(ごえん)をして食物を気道に詰まらせる危険が常にある。しかしそのおかげで、呼気を口腔に出して音声を作ることが可能になっている。食道の上端と下端には括約筋があって、食物が逆方向に進むのを防いでいる。さらに食道の壁の筋層が蠕動(ぜんどう)運動をするので、食塊は体位に関係なく胃に送られる。人間の食道の筋層は上半分が横紋筋で、下半分が平滑筋でできており、上部の蠕動の速度が下部に比べて10倍ほど速い。