胃壁は粘膜、平滑筋層、漿膜からなる。粘膜の表面には、胃腺の口である胃小窩が1平方センチに100個ほどある。食道に近い噴門部と十二指腸に近い幽門部では、胃腺は主に粘液を分泌する。胃の大部分の胃腺は、粘液を分泌する副細胞のほかに、塩酸を分泌する壁細胞、ペプシノーゲンを分泌する主細胞を有する。ペプシノーゲンは塩酸の働きで分解して、ペプシンというたんぱく分解酵素になる。胃液は胃腺から1日に1~2リットル分泌される。壁細胞の分泌する塩酸のため、pH(ペーハー)は約1である。食物中のたんぱく質は酸のため変性し、ペプシンの働きでペプチド結合の10%ほどを切られて寸断される。この強酸と強力なたんぱく分解酵素の作用から胃を守るのが、粘液の働きである。胃腺の粘液に含まれる内因子というたんぱくは、ビタミンB12と結合して、腸から吸収させる働きがある。胃を切除したり胃の粘膜に異常があると、吸収障害によるビタミンB12の欠乏症(悪性貧血)を起こす。