成人のたんぱく質摂取量は1日あたり60~80グラムであるが、分泌された消化酵素や腸上皮から脱落した細胞がこれに加わるため、実際に吸収されるたんぱく質の総量は、150~250グラムにのぼる。食物中のたんぱく質は、胃液の塩酸とペプシン、膵液のトリプシンやキモトリプシンの働きによって、アミノ酸残基2から6のオリゴペプチドにまで分解される。これ以上の消化は腸上皮細胞の刷子縁膜(さっしえんまく)内のオリゴペプチダーゼによって行われ、アミノ酸やジペプチドが生じる。これらの分子は刷子縁膜内の輸送たんぱくによりただちに細胞内に取り込まれ、ペプチドはアミノ酸に分解される。アミノ酸はそれから絨毛内の毛細血管に取り込まれ、肝臓にまで運ばれる。乳児の場合には、たんぱく質の一部は消化されずに丸ごと吸収される。初乳を与えるのが好ましいのは、そこに含まれる抗体が乳児に吸収され、免疫力を与えることになるからである。