人間は、口で息をすることもあるが、呼吸気の本来の出入口は鼻である。外鼻孔を通って鼻腔(びくう)に入る空気は、まず外鼻孔周囲の鼻毛によってほこりを取り除かれ、鼻腔粘膜で温められ、かつ湿気を与えられる。鼻腔の枠組みは大部分が骨で、外鼻として突き出た一部が軟骨でできている。鼻腔の内面の大部分は、線毛の生えた呼吸上皮を持つ粘膜で覆われている。鼻腔は鼻中隔によって左右に分けられ、側壁からは、上、中、下の三つの鼻甲介が突き出て、鼻腔を上、中、下の鼻道に分けている。鼻腔の後ろは後鼻孔となって咽頭に続く。炎症やうっ血のために粘膜が腫れると、鼻道が狭められて通気障害を起こす。鼻腔の内側壁の前下部には毛細血管網が発達し、鼻出血の出やすい部位である。鼻腔の周囲の骨の中には、鼻腔につながり粘膜で覆われた副鼻腔がいくつかある。その最大のものは、鼻腔の左右で上顎骨の中にある上顎洞である。鼻腔の炎症が収まっても、副鼻腔の炎症が長引いて、治癒しにくいことがある。副鼻腔にはとくに積極的な機能は認められないが、頭部を構成する脳、眼、耳、口などの器官の間を埋め、かつ頭の重さを軽くする意味があると考えられる。