肺胞に吸い込まれた空気は、肺胞の毛細血管との間で、すみやかにガスの交換を行う。酸素分子は、肺胞内の空気から肺胞壁、毛細血管壁を通して血液中に広がり、血液中の酸素分圧を上げる。しかし酸素の溶解度があまり高くなく、また酸素が赤血球内のヘモグロビン分子とすみやかに、かつ大量に結合するので、血液が十分に酸素で飽和するには約0.25秒かかる。これに比べて、血液が肺を通過する時間は、安静時では0.75秒と長いが、運動時には0.25秒ほどにまで短縮する。肺胞でのガスの拡散が障害されると、血液が十分に酸素化されず、動脈血の酸素分圧が低下する。これに対し、二酸化炭素は酸素に比べて溶解度が20倍ほども高いので、拡散障害はほとんど問題にならない。しかし血液中の二酸化炭素は、ほとんどが血漿中に重炭酸イオンとして溶けていて、赤血球中の炭酸脱水素酵素の助けを借りてから拡散するので、この酵素の活性を抑えると拡散が著しく低下する。