心臓には、自ら周期的に興奮を発生しそれを心臓全体に伝える装置が備わっている。興奮の源泉は右心房内面の上大静脈との境界近くにある洞房結節で、興奮はここから右心房下方の房室結節に伝わり、房室束を経て、心室筋内に広がるプルキンエ線維に伝えられる。この刺激を発生し伝導する組織は特殊化した心筋細胞からできており、刺激伝導系とよばれる。刺激伝導系の細胞はどの部位でも自律的に興奮する性質をもっているが、通常は洞房結節からの興奮が伝わってくるため、抑えられている。刺激伝導系を興奮が伝わる速度は一様ではなく、房室結節のところできわめて遅い。そのために、心房の収縮によって心室を充満させた後、心室が収縮して血液を拍出することになって、心臓のポンプ作用が円滑に行われる。刺激伝導系で、刺激の生成や伝導に異常が起こると、心臓の正常な拍動リズムが侵されて不整脈(arrhythmia)になる。予期されるよりも早く興奮が発生して収縮を起こすものを期外収縮、毎分100以上の心拍があるものを頻脈、心房や心室が不規則に高頻度で収縮するものを細動という。また洞房結節から心室筋内の大きな刺激伝導路のどこで異常が起こっても、心拍数が毎分60以下の徐脈を起こす。不整脈の種類や異常の部位は、心電図によって調べることができる。