胸壁に聴診器をあてると、心拍動に対応してI音、II音という二つの音が聞こえる。I音とII音の間のほうが間隔が短く、またI音がII音より低いので、二つの音の区別がつく。I音は心室収縮期の初めに、心臓の下端あたりでよく聞こえる。I音の原因はよく分からないが、房室弁の閉鎖、大動脈基部あるいは心室筋自身の振動などが重なっているといわれる。II音は心室収縮期の終わりに、第2肋骨の高さの胸骨縁あたりでよく聞こえる。II音は大動脈弁と肺動脈弁が閉じる時に発する音である。以上の正常な心音のほかに、心臓病とくに弁の異常の際には心雑音(heart murmur)が聞こえ、診断の有力な手がかりとなる。左心の僧帽弁(左房室弁)や大動脈弁のほうが、右心の三尖弁(右房室弁)や肺動脈弁よりも侵されやすい。弁の異常には、二つの型がある。閉鎖不全症では、弁の閉じかたが不完全で血液の逆流が起こり、狭窄症では弁の可動性が悪くなって血液の流れを妨げる。