動脈は、静脈と異なり、壁が厚く、高い圧に耐えるようにできている。しかしその壁の構造は、場所によって一様ではなく、大動脈とその主要分枝にあたる太い動脈と、臓器内にある細い動脈では、壁の構造もまた機能も大きく異なる。太い動脈では、壁の中膜(tunica media)に、平滑筋細胞のほかに弾性線維の層がよく発達する。壁にゴムのような弾力性があり、弾性動脈とよばれる。弾性動脈は、心臓から間欠的に送り出される血液を受けとめ、血流を滑らかにする働きがある。
細い動脈では、壁の中膜は主に平滑筋細胞からなり、弾性線維は中膜の内面と外面だけに限られる。平滑筋の収縮力によって、動脈の太さを積極的に調節するので、筋性動脈とよばれる。特に動脈が臓器内に入って枝分かれし、直径が0.5ミリ以下の部分を細動脈(arteriole)といい、血流に対する抵抗が大きく、血圧を調節する働きが大きい。心臓から見て末梢の循環の抵抗の相当部分を細動脈が担っている。したがって、細動脈の収縮状態は、動脈の血圧に大きな影響を与えることになる。
細動脈での血管抵抗は、さまざまな仕組みによって調節されている。まず細動脈内の血圧そのものが中膜の平滑筋細胞を伸展し、その力の大きさに応じて平滑筋細胞が収縮力を調節する。また血管内の血流の速度を内皮細胞が感知し、それによって平滑筋細胞を弛緩させる NO(一酸化窒素)や収縮を引き起こすエンドセリン(endothelin)などを分泌する。細動脈は、さらに交感神経から放出される伝達物質や、副腎髄質から放出されるホルモン、さらに腎臓を中心とするレニン・アンジオテンシン系による調節を受けているが、血管の平滑筋細胞の反応性は、器官により異なっている。