静脈の壁は薄いので、内圧が高くなると壁が引き伸ばされて、血管の内容量を増やす。静脈壁の引き伸ばされやすさは、特に細静脈の領域で、交感神経の働きにより調節されている。交感神経が刺激されると、静脈壁の中膜の平滑筋が収縮し、壁は伸びにくくなり、静脈から心臓に還流する血液量が増す。灌流血液量が増し、心臓壁がより伸展されると、心筋は収縮力を増し、自動的により多くの血液を拍出するようになる。直径1ミリ以上の四肢の静脈には弁が備わっていて、血液を心臓に向かってのみ流す。四肢の筋が収縮すると静脈を圧迫し、弁と弁に挟まれた一区間の血液を心臓に向かって送り出す。また息を吸う時には、胸腔の内圧が下がり、腹腔の内圧が上がり、そのため下大静脈の血液は心臓に向かって押される。これら筋ポンプや呼吸ポンプの作用は、血液の静脈還流を助けている。四肢の深部の静脈は動脈と伴行しているが、この配置により、温度の高い動脈血の熱は、手足で冷やされた静脈血に渡され、無駄な熱の損失が防がれている。血管内で血液が凝固し、ついには静脈が閉鎖してしまう静脈炎や、静脈が異常にふくれて血液の流れが悪くなる静脈瘤は、下肢の静脈に起こりやすい。