右心から肺を通って左心に戻る肺循環には、左心から全身に向かう体循環とほぼ同量の血液が流れる。しかし肺動脈の血圧は約15ミリ水銀と低く、右心から左心に血液を流す駆動圧は、体循環の10分の1ほどである。そのため肺の血管抵抗は小さい。肺内では体循環でのように細動脈の収縮により血流分布が決まるのではなく、重力の影響により決まる。人が立った時は、肺の上部にかかる血圧は下部に比べて小さくなり、そのため血流量も少なくなる。横に寝た時には、肺の上部と下部の血流量差は小さくなる。肺の毛細血管では水を再吸収する浸透圧差が濾過をする静水圧差より大きいため、組織間や肺胞内に水がもれることがない。しかし左心不全で肺の毛細血管圧が増すと、肺のとくに下部に浮腫を起こし、呼吸機能に重大な障害を起こす。肺には、気管支動・静脈も出入りするが、その循環血液量は肺動・静脈の1%ほどである。