抗体の本体をなすたんぱく質で、イムノグロブリンともいい、Ig(アイジー)と略記する。人間の免疫グロブリンは、分子構造と機能の上から五つのクラス、G、M、A、E、Dに分けられる。このうちIgGがもっとも基本的で、H鎖2本とL鎖2本の計4本のペプチド鎖から分子ができている。IgGは血液中のIgの80%ほどを占める。IgMは五つの分子がつながってできており、細菌などを凝集させる反応が強く、抗体産生の初期に出現する。IgAは粘膜から分泌されるIgの主なものであり、それを産生する細胞は局所の粘膜下に多い。粘膜から分泌されたIgAは分子が二つつながった形である。IgEは血液中にごく微量(IgGの1万~5万分の1)存在するだけだが、好塩基球とマスト細胞に吸着し、これらの細胞からヒスタミンなどを放出させてアレルギー反応を起こす抗体である。IgDの機能はよく分かっていない。
免疫グロブリン分子の形は、Y字にたとえることができる。短い2本のL鎖(L-chain ; light chain)はYの両腕に位置し、長い2本のH鎖(H-chain ; heavy chain)は腕と脚にまたがる。両腕ではL鎖とH鎖の間に、脚ではH鎖同士の間にSS結合があり、分子をまとめている。たんぱく分解酵素パパインで処理すると、IgGは両腕と脚の3部分に分かれ、前者をFab、後者をFcとよぶ。抗体分子の抗原と反応する部分はFabの先端部にあり、アミノ酸配列に変異が大きい(V域)。補体と反応する部分や細胞表面のレセプターと反応する部分はFc部分にある。Fabの根元とFcはクラスによって配列がほぼ一定である(C域)。免疫グロブリンのV域を遺伝子の情報によって作る際に、H鎖では100個のV遺伝子と10個のD遺伝子と4個のJ遺伝子からそれぞれ1個ずつ選ばれて組み合わされるので4000種類の組み合わせがあり、L鎖でも同様に1500種類の組み合わせがある。さらに塩基配列のずれによる違いを考慮すると約5000万種類の可能性があり、これにより抗体の多様性(antibody diversity)が説明できる。