免疫反応の役割としては、まず侵入した細菌などに対して特異的な抗体を作り、感染から生体を防御する働きがあげられる。また細胞分裂に伴って突然変異した細胞が腫瘍となって増殖するのを防ぐのも、免疫系の働きと考えられる。エイズなどで免疫不全になると重篤な感染症を起こして死に至るように、免疫系は生体防御に不可欠である。一方、免疫系がさまざまな過敏症を起こし、ときには重い病気を起こすことも知られている。たとえば花粉などに対するアレルギー、全身的あるいは臓器特異的な自己免疫疾患も、免疫反応の異常によるものである。予防注射や腫瘍の免疫療法は、免疫系の働きを利用したものである。その一方で、免疫系は他人の組織や細胞に対しても抗体をつくるので、輸血や臓器移植の際には免疫反応が起こらないように制御する必要がある。
免疫反応の特性としてはまず、抗原に対して特異的なことがある。作られる抗体が抗原に対して特異的なだけではない。抗原が2度目に侵入した時の強い抗体産生も、同じ抗原でないと起こらない。免疫系は膨大な種類(100万~1000万)の特異性の異なる抗体分子を作りうる。すなわち、どのような抗原にも対応するための多様性も免疫系の特性である。また免疫系の反応は、同一の抗原刺激に対してもそれまでの履歴や状況によって異なる。さらに条件によっては抗原に対して特異的に無反応になることもある(免疫学的寛容)。このような柔軟性が免疫系にはある。病原ウイルスが突然変異して、それまでにない新しい抗原が生じる可能性は常にある。そのような予期しない抗原に対しても、免疫系には学習能力があり、抗原刺激に対応することができる。