同種他個体の組織片を移植すると、たいてい強い拒絶反応が起こるが、それを引き起こす抗原は細胞表面にあって遺伝的に決まっており、体内すべての細胞に共通である。これを組織適合抗原という。人間の主要な組織適合抗原はもともと輸血された白血球に対する抗体として見つかり、ヒト白血球抗原(HLA ; Human Leucocyte Antigen)とよばれる。HLAを支配する遺伝子座はA~Dの四つあり、それぞれが多数の対立遺伝子をもつので、HLAが個人間で完全に一致する可能性はかなり低い。臓器移植による拒絶反応を抑えるためには、臓器の提供者と受容者の間で、HLAの型および場合によっては血液型が一致する必要がある。リンパ球は、抗原提示細胞の表面に異物の抗原と同時に自身の組織適合抗原を認識して初めて抗体を産生し始めるので、組織適合抗原は免疫系にとって不可欠の要素である。