臓器移植をして免疫抑制をしている場合などに腫瘍発生率が高くなることから分かるように、免疫系はがんの発生を抑えていると考えられる。免疫系が腫瘍を抑制するのは、正常な個体の組織にはない腫瘍に特異的な抗原に免疫系が反応するからである。腫瘍免疫反応の主体は細胞性免疫であり、とくに遅延型過敏症や細胞障害に関係するT細胞やマクロファージ、ナチュラルキラー細胞の役割が重要である。このような免疫監視機構にもかかわらず生体が腫瘍の増殖を阻止できない理由は、まだよく分からない。中年以降のがんが臨床的に見つかるまでには、20年以上もかかって成長する。そのようながんでは腫瘍の免疫原性が弱かったり、腫瘍から放出される抗原物質が免疫寛容を起こしたり、また体液中に抑制物質が見つかる場合もある。