成人の脳の重量は、男性で1350~1400グラム、女性で1200~1250グラムである。外から見て脳の大部分を占めるのが大脳で、表面に指ほどの太さのうねと溝があって、表面積を広げている。その後下方に顔をのぞかしているのが小脳で、表面に細かいうねと溝がある。大脳とに隠れた中心部は脳幹である。脳幹の下端部を延髄といい、脊柱の中に収まる脊髄につながっている。脳は、髄膜という結合組織の被膜で包まれる。髄膜は硬膜・クモ膜・軟膜という3層からなる。硬膜は薄手のボール紙のような丈夫な膜で、頭蓋の内面に張り付いている。軟膜は脳の表面に密着する薄い皮膜で、クモ膜は両者の間を満たす柔らかな結合組織である。クモ膜の内部では、結合組織の線維の間に脳脊髄液が充満しており、この液によって満たされた空間をクモ膜下腔という。脳は、脳神経と血管とによって外部とつながっている。脳神経には12対があって、おもに脳幹から出て、頭蓋底のいくつかの孔を通って外に出ていく。脳に入る動脈には内頸動脈と椎骨動脈の2対があって、たがいに交通して脳底部に大脳動脈輪を作り、そこから脳に入る枝が分かれ出る。脳から出る静脈は、おもに頭蓋冠の内側の硬膜静脈洞に集まり、そこから脳底部の孔を通り、内頸静脈となって出ていく(これらに関連する病気には、クモ膜下出血や、汚染されたヒト硬膜移植から発生するクロイツフェルト・ヤコブ病などがある)。