錐体路とは、主として運動野からおこり脊髄の運動神経細胞に投射する神経線維束である。この線維束が延髄の腹側面の正中線の両側で錐体という膨らみをつくるところからこの名がある。錐体路がその走行の途中で障害されると、運動麻痺を起こす。これに対し、大脳基底核が障害されると、不随意運動や筋緊張の異常が現れる。古典的な神経学では、大脳皮質から基底核、脳幹網様体などを経由して脊髄運動神経細胞に至る経路を想定してこれを錐体外路と称し、大脳基底核の病変による運動障害を錐体外路症状と称していた。しかし神経回路網の研究によれば、大脳基底核からの出力の大部分は視床を経て大脳皮質に戻る。したがって錐体外路症状の基礎となる錐体外路は、解剖・生理学的には存在せず、大脳基底核の病変による症状は実は錐体路を通じて発現されていると考えられる。