明所から暗所に移ると、はじめはものが見えないが、やがて見え始める。この過程を暗順応といい、30分ほどで完了する。逆に暗所から明所に移った時のまぶしさに慣れる明順応は1分ほどで完了する。明暗順応により、網膜の感度は100万倍にも変化する。この暗順応と明順応は、視細胞の外節に含まれる視覚色素が、分解されたり再合成されたりする過程に密接に関係している。杆状体に含まれる視覚色素はロドプシン (rhodopsin) とよばれ、ビタミンAから作られるレチナールと、オプシンというたんぱくからなる。ロドプシンに光があたると、そこに含まれるレチナールの構造が変化してオプシンから離れるが、それを再びロドプシンに合成するのは色素上皮細胞の役割である。ビタミンAが欠乏すると、この合成が阻害され暗所での視覚が弱る夜盲症 (nyctalopia) となる。光の強弱の変化に対して、虹彩は瞬時に瞳孔の大きさを変えて、網膜に届く光の量を調節する。虹彩には、瞳孔を開く瞳孔散大筋と、瞳孔を閉じる瞳孔括約筋の2組の平滑筋があり、前者は交感神経、後者は副交感神経の刺激によって収縮する。瞳孔の直径は最大で2.2倍ほど変化し、光の量を5倍ほどに増減するが、網膜自身の順応能力にははるかに及ばない。