嗅覚は、空気中を浮遊する揮発性物質の化学的な性質を感知する感覚である。いくつかの基本的な臭いを区別し、すべての臭いをその組み合わせによって説明しようという試みもある。臭い物質を感知できる最低濃度を閾値(しきいち)といい、物質によりさまざまである。メルカプタンは、空気1リットル中のわずか4×10-10~10-8ミリグラムを感知できる。ヒトの嗅覚は他の動物よりも鈍感で、たとえばイヌよりも100万~1000万倍も閾値が高い。物質の化学構造と臭いの感覚の関係は一定でなく、たとえばスカトールという物質は低濃度ではジャスミンの香りだが、高濃度では悪臭となる。嗅覚は、一つの臭いに対して短時間で順応し感じなくなるが、その場合でも他の臭いは感ずる。また身体の状態に影響されやすく、妊娠初期に敏感になり、糖尿病ではしばしば嗅覚の低下が起こる。