ヒトを含む四肢動物の体肢(手足)は、体幹の腹側部に突き出た構造である。ヒトでは、胎生の第5週頃に体幹から突き出す2対の体肢芽ができる。体肢の骨格と筋は体節から直接生じるのではなく、体肢芽の中の間葉細胞が分化して生じる。体肢の骨格はまず軟骨として形成され、それが骨に置き換わる軟骨性骨として形成される。上腕、前腕、大腿、下腿の長管骨では、骨幹と骨端の三つの骨化点から骨に置き換わり、骨幹と骨端の間の骨端軟骨が思春期まで軟骨のまま存続し、骨の長さの成長に役立つ。手首の手根骨は八個の骨からなり、生後に骨化を始め、次々に骨化点が現れて、最後の骨が12歳頃に骨化するので、幅広い年齢にわたって骨の成長の程度(骨年齢)を推定するのに役立つ。体肢の筋を支配する脊髄神経は、いくつかの脊髄分節のものが互いに吻合、分枝をして神経叢(しんけいそう)を作り、その枝が筋に達するため、体幹本来の分節的な構成は失われている。しかし神経叢から出る背側の枝が伸筋を、腹側の枝が屈筋を支配する。また体幹に近い筋よりも遠位の筋のほうがより下位の脊髄分節に支配されるという規則性が常に見られる。