頭蓋には、脳を入れる神経頭蓋と口や鼻などを含む顔面頭蓋に区別される。神経頭蓋では、頭蓋底にあたる部分の骨はまず軟骨として生じてから骨化する軟骨性骨であるが、頭蓋冠の骨はもっぱら間葉が直接に骨化する膜性骨である。顔面頭蓋では、鰓弓(さいきゅう)に由来する骨は軟骨性骨だが、その周囲に膜性骨の要素が付加されている。頭蓋は脊柱の延長上にあるので、頭方部の分節が発展して生じたという考えもある。しかし頭蓋骨の中で体節に由来すると明らかに認められる要素は、後頭骨の中の舌下神経管よりも下の部分だけである。舌下神経は本来は脊髄神経で、体節由来の骨が頭蓋にとりこまれた結果二次的に脳神経となったものと考えられている。発生過程では、脊索は下垂体の後ろあたりにまで認められるが、そのあたりの脊索周囲に生じる軟骨には、分節的な構造が認められない。頭部の筋はいずれも脳神経により支配されるが、その中で体節に由来するものと鰓弓に由来するものとが区別される。体節に由来するものとしては、眼球を動かす外眼筋と舌を動かす舌筋がある。外眼筋は動眼神経、滑車神経、外転神経により支配される。舌筋は舌下神経により支配される。鰓弓に由来する筋としては、下顎を動かす咀嚼筋(そしゃくきん)と顔面の皮膚を動かす表情筋がある。咀嚼筋を支配するのは三叉神経であり、表情筋は顔面神経の支配である。